税制改正の動向いかに 暦年贈与

令和4年度の税制改正において、税制改正大綱の中で相続税と贈与税の一本化がなされるのではと注目されましたが、見送られています。

令和5年度の税制改正大綱の発表が12月に発表となりますが、それを前に新聞報道が出ましたので、確認しておきましょう。

贈与で節税?

一般的に年間110万まで無税と認識されているのは、暦年贈与という制度になります。年間で110万円まで非課税で、それを超えた部分に、累進税率で課税される仕組みになります。

年間110万円の範囲で贈与をされる方もいらっしゃいますが、富裕層の間では、相続税より税率が低いのであれば、贈与税を払ってでも資産を贈与し、相続税の節税に生前贈与が活用されています。例えば、将来の相続税の税率が40%と試算される場合で、贈与税の負担が10~30%の範囲なら、贈与税を払ったでも生前贈与した方が、税負担が軽くなると判断する場合などです。

諸外国では、相続税と贈与税が一本化されている国もあり、わが国でも改正の検討が行われています。

改正の方向性

現在の制度では、亡くなる前3年間に行われた暦年贈与は、相続財産に加算することになります。

現時点では未定でありますが、新聞報道によると、次年度の改正では、これを5~10年に延長する方向で議論されているそうです。この改正が行われると、暦年贈与で資産を次の世代に移していた場合、亡くなる5~10年の間に行われた暦年贈与は、相続財産に合算され、実質的に節税効果が無効となってしまいます。

新聞では、お金が必要な若年層に早い段階で贈与を促進するのが趣旨のように紹介されていましたが、逆にから見れば親が高齢になってからの相続対策に暦年贈与を活用する道を制限するものとも言えます。

暦年贈与をこれから活用したいと考える方、また活用してきた方は、税制改正の内容がどうなるか要確認と思われます。